浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1076話

3月の大震災による計画停電の時のお話です。
初めて明かりの無い夜の町を歩いた方も少なくはないと思います。
夜でも明るい現代社会に慣れて育った私は興味本位もあり、少し外へ出かけてみました。
実際に歩いてみるといつもとは違い、慣れた道も暗く不安になるのですが、建物の隙間から差す月の明るさに驚きを覚えました。「この暗闇でも月の光はこんなにも道を照らしてくれるものなのか」と思い知らされたと同時に、宗歌を思い出しました。

皆様は浄土宗の宗歌をご存じでしょうか?
「月かげの いたらぬさとはなけれども ながむる人のこころにぞすむ」
という法然上人の歌われたものです。

この歌は、阿弥陀様の光明を月の光に例えたものです。月の光は分け隔てなく降り注ぎ、暗い夜道を照らしてくれています。その月の光の有り難さに気付き眺める者、つまり阿弥陀様の光明に気付いた念仏信者こそが、その恩恵をこうむり、不安な心に光を宿し、心が澄むのであるという歌です。このすむとは心のモヤモヤが晴れるかの様に澄みわたるの澄むであり、阿弥陀様が心に住まわれると言う意味の住むではないとされております。

今年の夏も計画停電が在るかもしれません。
現代において不便を感じる方も多いと思います。しかし、私達浄土宗の念仏信者であられる方々には、月かげの歌を思い出して頂き、法然上人が眺められた月の光を今一度眺めて見て下さい。そして、阿弥陀様の光明を感じて南無阿弥陀仏とお唱えしてみるのは如何でしょうか?
自らの極楽浄土への往生の為、そして震災に遭われ亡くなった横難横死の方がたへのご供養に南無阿弥陀仏とお唱えし、霊位をご回向する事も私達に出来るボランティアではないでしょうか?

次回は6月21日にお話が変わります。