浄土宗神奈川教区テレホン法話 第802話

 秋の深まっていくなか、お元気でお過ごしでしょうか。
 さて、今回は「ほどこし」についてお話しさせていただきます。
 ほどこしというと、何かお金持ちの人が貧しい人に物をめぐんでやる、というような意味にとらえがちですが本当はそうではないのです。お寺やお坊さんにさしあげるお金のことをお布施といいますが、そのお布施の施の字に「し」を付けて「ほどこし」と読みます。ですから、さしあげるという意味のことばで、めぐむとか与えるという言葉の意味は少し違うのです。そして、この布施ということばは人間をより高めるための六つの行い、これを六波羅密といいますが、その中の第一番目が布施という行なのです。その布施の行とは、自分のできることを人にしてさしあげる事なのです。そしてその布施の行の心がけとして大切なことは、さしあげてそのお返しを期待しないことです。どうしても我々人間は、これだけのことをしてあげたのだから、何かしてくれるはずだと考えてしまいがちです。しかし、お返しを期待するのでは「ほどこし」布施の行にはなりません。よろこびを捨てると書いて、喜捨という言葉がありますが、人に何かをしてさしあげることが出来る事を喜ぶその気持ちが大切なのです。そしてこのほどこしは、お金や物ばかりではありません。動作やおこない、言葉や顔つきにまで、広くできるほどこしなのです。そう考えると身近な事でもできるほどこしがたくさんあるのではないでしょうか。そしてほどこしをたくさん行い、つまり六波羅密の布施行を行い、人間をより高めていく事が出来ればありがたい事であると思います。
 お寺やお坊さんに対するお布施も大切な事ですが、身近な生活の中でさりげなくあたりまえの事として出来るほどこしもたくさんあるのではないでしょうか。

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