浄土宗神奈川教区テレホン法話 第989話

高座組 上田真彦

 平成21年という新しい年を迎え、10日余りが経ちました。 さて、今年も多くの新成人が成人式を迎え、社会へ巣立っていきます。大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ますことを趣旨とする国民の祝日「成人の日」。現在は、ハッピーマンデー制度の施行により、1月の第2月曜日がその日とされておりますが、かつては、1月15日がその日に定められておりました。これは、男子が成人したことを示す儀式「元服」が小正月である1月15日に行われていたことに由来するといわれております。 一言に、大人になるということはどういうことなのでしょうか?飲酒や喫煙ができるということ、又、親の同意がなくとも結婚ができるということ、そんないいことばかりではありません。学生の時分は、自覚のない言動に対し、口うるさく言われながらも最終的には許されることもありましたが、大人になったら、自ら放った言動は自ら決着をつけなければならない、即ち、自分自身に責任が求められるということでもあるわけです。ですから、ごく些細なことで人に怒りをぶつけたり、自分にとって嫌いな人に、平気で悪口を言ったり、冷たい態度をとったりすることを「大人気ない」といわれるように、大人の人間関係においては、いただけない行為といえます。 とはいっても、人に感情というものがある限り、憎悪や嫌悪が芽生えることも、また事実です。そんな時は、かつて自分も未熟で至らぬが故に、人の怒りを買ったり、迷惑をかけ、居たたまれぬ気持ちに苛まれ、許しを乞う立場に立った時のことを思い出して下さい。そうすれば、怒りは自然と治まるはずです。法然上人のみ教えに「愚者の自覚」というものがあります。新成人の皆さん、社会に巣立っていくにあたり、心に留めておいて下さい。己の愚かさ弱さを知らずして、人へのいたわりや思いやりの心は生まれないということを。