浄土宗神奈川教区テレホン法話第977話

京浜組 良忠寺 森本 有史

今回はお彼岸についてお話させて頂きます。お彼岸には3月の春のお彼岸と、9月の秋のお彼岸があります。太陽が真西に沈む春分の日と秋分の日をお中日とする前後3日間の合計7日間、その一週間をお彼岸といい、西方極楽浄土にいらっしゃる阿弥陀様を念じて様々な行事を催すお寺も多いのではないでしょうか?国民の祝日に関する法律によれば、春分の日は自然を称え、生物を慈しむ日。秋分の日は、先祖を敬い、亡くなった人を偲ぶ日。と定められています。「彼岸」とは、「彼(か)の岸・向こう岸」という意味です。これは、今我々が生活している、苦しみの多いこの世「此岸(しがん)・このきし」に対して、理想の世界である極楽浄土を指す言葉です。法然上人が浄土宗をお開きになるうえで師と仰いだ中国の善導大師が、「春分と秋分は太陽が真西に沈むので、日没の彼方にある極楽浄土を想い、敬慕の心を持つべきである」と説いているように、太陽に向かって、その極楽浄土に往生したいという決意を新たにするのが、お彼岸の1週間なのです。仏教では悟りへの道として、布施(ふせ)・持戒(じかい)・忍辱(にんにく)・精進(しょうじん)・禅定(ぜんじょう)・智慧(ちえ)という六波羅密というものがあります。布施は人に施すこと。持戒は戒めを守ること。忍辱は耐えること。精進は努力すること。禅定は心を落ちつけること。知慧は真理にもとづく考え方や生き方をすること。お彼岸とは、こうした仏教の教えを実践する仏教週間ともいえます。皆様のご先祖様を偲び、自分がいまあることを感謝し、ご先祖様のご供養をすると共に、自らも極楽浄土に往生できるよう精進する一週間なのです。
次回は9月21日にお話が変わります。