浄土宗神奈川教区テレホン法話 第941話

小田原組 岩崎 正伸 このお話に変わる9月11日は皆様ご存知のように、ニューヨークをはじめとする同時多発テロが起こってしまった日です。この事件の犠牲者は2,749人といわれ、その数は現在も増え続けています。この事件を口実に、アメリカ政府は、アフガニスタンやイラクに報復戦争を起こし、さらに尊い命が失われています。今や西洋と中東の対立はキリスト教圏とイスラム教圏との宗教争いの様相を呈し始めています。仏教徒である私たちはこの一連の世界情勢をどのように捉えればよいでしょうか。仏教徒と一言で言っても様々な立場の方がいらっしゃると思いますので、個人的な意見としてお聞き願いたいのですが、私たちの宗祖法然上人だったらどのようにお考えになるでしょうか。法然上人は9歳の時に、父親の漆間時国(うるまのときくに)が、その時の新しい勢力と今までの勢力との対立が起こり夜襲をかけられ非業の死を遂げました。 この時、深手をおった時国は法然上人を呼び、臨終に際しこのように語りました。「敵を恨んではいけません。これも私の宿業です。もし、あなたが恨みを抱き、敵を討つなら、その子もまたあなたを討ち、それは決して終わらないでしょう。だから恨みを捨てて私の菩提を弔い、かつ、自らの解脱を求めなさい。」法然上人の父時国もまた、立派な宗教者であったといえるでしょう。この遺言により、法然上人は救いを求め、出家の道を歩むことになるのです。この幼い時の悲劇を経験した法然上人は、現在の報復合戦を悲しむでしょう。 しかし、アメリカでは「ピースフル・トゥモロウズ」という平和団体がアフガン攻撃の始まる前から9・11の遺族を中心に組織され、「愛する人を失ったこの私たちの悲しみを他のいかなる人々にも味合わせたくない。」との思いから、政府の報復戦争に反対する運動も起こっています。法然上人の父、時国の思いと似ていますね。 浄土宗では、毎月25日を世界平和念仏の日として、この日の正午にお念仏をお唱えすることにしています。悲しみを乗り越え、許しあえる日が1日でも早く訪れることを願います。

次回は、9月 21日にお話が変わります。