浄土宗神奈川教区テレホン法話 第683話

 7月は東京、横浜などの都会地ではお盆になります。経典からすれば、お盆は7月に行われる行事ですので当然なことです。しかし全国的には、8月の新暦にお盆をするのが多いのは、それなりに理由があるようです。いろいろな説がありますが、季節の初物を用意できる収穫期に合わせることと、夏休みになることもあり、この時期にお盆を行うようになったと言われています。
 お盆の正式な名称は盂蘭盆会といいます。盂蘭盆とはインドの古い言葉「ウランバナ」に漢字をあてたもので、「逆さまに吊される苦しみ」という意味です。こうした苦しみの中にある人々を、今この世にある私たちが供養し、その功徳によって救おうとの願いをこめて行われるのがお盆であります。
 お盆の始まりはお釈迦様の弟子の一人、目蓮尊者の物語に由来します。目蓮尊者のお母さんは生前欲をむさぼり、人に施すということをしなかったため餓鬼道に落ちてしましました。その母を救うためには、7月15日、修行僧が修行を終える日に食事を施しなさい。そうすれば修行僧たちは、餓鬼で苦しんでいる者のために、喜んで回向してくれるでしょう。その功徳によって母親や餓鬼道で苦しむ多くの者は、すべて極楽に生まれ変わることが出来るでしょう。とお釈迦様から教えられ、この教えに従ってお母さんを救うことが出来たのです。
 子供のことを悪い言葉でよくガキといいます。欲望だけで物を欲しがり、満足せずにもっともっとと望みます。私たちの心の底にひそむ、暗くて炎のように燃え盛る欲望を象徴した姿を餓鬼というのでしょう。子供に限らず大人でも、いつの間にか何かにとらわれて、大なり小なり餓鬼道に足を踏み入れてしまい、餓鬼に負けてしまっているのです。正しい教えをよりどころとし、お念仏を称えて過ごす日々の中で、とらわれのない心で餓鬼の心を取りのぞき、少しでも世のため人のために役立つ生命にしたいものです。

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