浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1134話

光雲寺 慶野匡文

数年前、電車に乗っていましたら、ある広告のキャッチコピーに「初志貫徹、臨機応変、あなたはどちらを選びますか」というものがありました。つり革に手をやりながら、その問いに自分はどちらを選ぶかと考え込んでしまいました。よく考えてみますと、初志貫徹、臨機応変、この二つは究極的な選択であります。あなたは、妥協を許しますかということを聞かれているようにも思います。私どもは人生の中で何度も、この選択に巡り合う気がします。常に臨機応変に対応していけば、うまくやれていけそうですが、この言葉は聞こえはいいですが、要するに行き当たりばったりということです。一方、初志貫徹は意思の強さを感じます。あらゆる不遇にも屈せず、はねのけ、貫いていくというのです。しかし、場合によっては、周りに気を配らず、自分勝手で、組織社会の中ではもう少しみんなに合わせろと、そんな非難がとんできそうです。初志貫徹と臨機応変の選択、なかなか難しいものです。判断を誤ると大変でしょう。しかし、お念仏のみ教えにおきましては、そういうことではいけません。様々な誘惑に動かされることなく、仏様ご自身が、多くの行の中からこの念仏を選んで下さり、ひとえに念仏だけでよいとされているのですから、初志貫徹と決めていただきまして、ただ一向に念仏をお称えするだけでいいのです。臨機応変にお称えするのではなく、日々の信仰としてお念仏で過ごすことだけであります。法然上人のみ教えは、ひとえに念仏と定め、初志貫徹に人生を全うせよとのお言葉と受け止めて毎日を過ごして参りましょう。