浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1052話


 「徒然草」の第三十九段には、こんな話が書かれています。
 ある人が、お念仏の最中、どうも睡魔に襲われます。どうしたらよろしいですか?と、ある人が法然上人に尋ねました。すると法然上人は、「目が醒めたとき、お念仏をすればいいですよ」と答えられました。
 なにも腿に錐を突き立てたりして、睡魔と格闘する必要はありません。眠くなったら居眠りをし、そして目が醒めたらまた一生懸命お念仏すればいいですよ。と、法然上人はそう言われました。
 この文章の原本には最後に「いと尊かりけり」と書かれています。『徒然草』の作者の吉田兼好の感想ですが、私も同感です。ほんとうにすばらしい答えだと思います。
 法然上人は、我が浄土宗の開祖であります。法然上人はまた、こんなふうにも言っておられます。
 お念仏をするのに、こうでなくてはいけないといった決まりなんてありません。結婚をしたほうがお念仏を称えやすいのであれば、結婚すればいい。家に居てもよいし、流浪してもよい。他人の援助を受けてもよいし、自力の独力で生きてもよい。大勢の仲間と一緒のほうがお念仏を称えやすければ、大勢でやればいい。一人のほうがよければ、一人でお念仏すればいい。
 法然上人はそう言っておられます。非常におおらかな考え方であり、どこにもこだわりがありません。
なにも窮屈に考える必要はありません。そう思って、私はいつも法然上人の言葉を思い出しては、ほっとしています。
 平成二十三年は、宗祖法然上人がお亡くなりになって八百回忌の年に当たります。
 次回は、十月二十一日にお話がかわります。