浄土宗神奈川教区テレホン法話 第1018話

高座組 生往寺 坂本 慎成

百楽天という方と道林和尚との有名なお話です。
百楽天は仏教の真髄を知ろうと道林和尚に訊ねました。和尚はこう答えます。
「悪いことをするな、良いことをしろ。」と、
百楽天は笑って言います。
「そんなことは3歳の子供でも知っている。」
和尚は言います。
「3歳の子供でも知っているかもしれないが、80を過ぎたものでも出来ているものはいない。」
このお話はよく「わかること」と「出来るということ」の大きな違いを説く例えとしていわれるものですが、この「悪いことをするな、良いことをしろ。」というのは正に仏の教えであります。
私たちはこれを知っているのですから、実践しなければなりません。どうすれば良いのでしょうか?
 まず、悪いことというのはどういうことでしょうか?
殺生(生き物を殺したり)、盗みをはたらいたり、嘘をついたり、妬んだり、威張ったり、怒ったり、それこそ3歳の子供でも知っていることなど、色々思い浮かべることができます。
 良いこととはなんでしょうか?
先ほど挙げた悪いことをしないのが良いことでしょうし、親切をしたり、笑顔でいたり、施しをしたりとこれもまた色々とあるでしょう。
やはり、私たちはなかなか継続してできてはいません。そして、この人の世というところは往々にして悪い行いが良いとされてしまったり,良い行いが悪くなってしまったりとなかなかうまくいきません。
私たちは悪いことをしないというだけのことを出来ないばかりか,善悪の判断もおぼつかないという全くもって至らない人であります。聖者ではありませんし、なれません。
 ただ、こんな愚かな私たちでさえ行うことの出来る簡単で確実に良い行いを法然上人は教えてくださっております。それは「南無阿弥陀仏」とお称えするお念仏であります。これならば3歳の子供でも、80歳の老人でも出来るのではないでしょうか。私たちは悪いと思うことをなるべくせずに、良いと思うことを出来るだけするという心づもりで、ただ確実に良い行いであるお念仏に励んでいけば良いのであります。